気づき(棋譜並べ)

棋譜並べの良いところは、「気づき」だと思います。他者の碁を並べることで新たな考え方に気づき、長い目で見れば成長の一助になるのではないでしょうか。
さて先日入手した『現代囲碁大系第二十四巻 杉内雅男』を並べたところ、一介の級位者が驚いた手があったので紹介します。

昭和32年3月20、21日
第4期日本棋院選手権挑戦手合三番勝負 第二局
先番・杉内雅男八段 ― 坂田栄男日本棋院選手権者
(コミ4目半)


(途中図A、○96(E18)まで)
左下で手が進むこの場面、私は次に隅の黒が直接生きる手を打つものだとばかり考えていました。
しかし……

(途中図B、●97(B14)まで)
実戦では白二子にツケる一手でした。
この手は想像がつきませんでした。隅の六子が、放っておいたら殺されると思ったからです。
余談ですが、仮に図Aの右下だけを示されたら、

どう考えても▲の黒生きが正解でしょう。
20目近くを失いかねない場面であるにもかかわらず、杉内先生は別の場所に打ちました(●97と打つことで、隅の黒が全滅することは無いようです)。「二眼をつくって確実に生きる」ということばかり考えていた私にとって、新たな気づきを得た棋譜並べでした。