「みことの一手!」第4話:私事を交えて

E-mailをばはや読み果てつ。和室の卓のほとりはいと静かにて、蛍光灯の光の晴れがましきもいたづらなり。今宵は夜ごとここに集ひ来るSNS仲間も「リアル」に宿りて、ネットに残れるは余一人のみなれば。
五年前のことなりしが、平生の望み足りて、「幽玄の間」のアカウントを取得し、某所で囲碁ブログを作りしころは、目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新たならぬはなく、筆にまかせて書き記しつる自戦記日ごと幾千言をか為しけむ、当時の仲間に賞せられ、世の人にもてはやされしかど、今日になりて思へば、をさなき着想、身の程知らぬ放言、さらぬも尋常の手筋定石、さてはチャットなどをさへ珍しげに記ししを、心ある人はいかにか見けむ。
こたびはまんがタイムきららMAX」2014年4月号を買ひしとき、日記ものせむとて開きし作成画面もまだ白紙のままなるは、「みことの一手!」第4話を読みせし間に、一種の「アドレナリン」の気性をや養ひ得たりけむ、あらず、これには別に故あり。
   ――森鴎外舞姫』(※1)
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私は高校の囲碁将棋部で囲碁を覚え、五年ほど前に「幽玄の間」(ネット対局サービス)の会員となりました。大会にも参加して5級まで認定されましたが、なかなか上達しない棋力や不出来な対局ばかり続く日々に嫌気がさし、2年前に退会しました。
毎日少しずつでも詰碁を解いたり棋書を読んだりすれば、いまごろもっと上達していたのかもしれません。しかし勝っても負けても動揺を覚える精神的弱さに自ら屈し、現在に至っています。
「みことの一手!」の主人公・みことは、対局やアクシデントで心が折れそうになることがありました(たぶん、今後もあるはずです)。しかしそのたびに逃げず成長する姿は、半ば挫折したアマ棋士の心を打つものがあります。
「つ…詰碁の本よ 毎日十問解いてるの/継続した努力が大事だからね」(※2)
楽しさはもちろん、囲碁にとどまらない普遍的なテーマを提示する「みことの一手!」。
打つ打たないにかかわらず、すべての方にお勧めします。
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※1 もちろん、パロディ。
※2 同号208ページ。