第十一段 「神無月のころ……」
【原文】
神無月のころ、栗栖野という所を過ぎて、ある山里にたづね入ること侍りしに、遥かな苔の細道をふみわけて、心ぼそく住みなしたる庵あり。木の葉に埋もるる懸樋のしづくならでは、つゆおとなふものなし。閼伽棚に菊・紅葉など折り散らしたる、さすがに住む人のあればなるべし。かくてもあられけるよとあはれに見るほどに、かなたの文机に、『ご注文はうさぎですか? アンソロジーコミック(2)』の、宇城はやひろ先生の作品が開かれたるが、ティッピー、あんこ、ワイルドギースのまはりを囲ひたりしこそ、少しことさめて、この本なからましかばと覚えしか。
【現代語訳】
初冬十月ころ、栗栖野という所を通って、ある山里に人を尋ねて入っていったことがありましたが、どこまでも続く苔の生えた細道を踏み分けて行くと、物寂しげに住んでいる庵があった。木々の落葉に埋もれる懸樋から滴る雫のほかには、音を立てるものもまるでなかった。閼伽棚に菊や紅葉などを折って適当に置いてあるのは、それでも住む人がいるからなのであろう。こんな状態でも人は生きていけるものだよと感慨深く見ているうちに、向こうの文机に、『ご注文はうさぎですか? アンソロジーコミック(2)』の、宇城はやひろ先生の作品のページが開かれているものがあり、102〜103ページのティッピー、あんこ、ワイルドギースを手書きで囲っていたのには、少し興が醒め、この本が無かったらと思えたことである。
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――兼好法師「徒然草」(※)
ご注文はうさぎですか?アンソロジーコミック (2) (まんがタイムKRコミックス)
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先生、あんこを見つけることができませんでした。
さて、「すべてがかわいいアンソロジー」という言葉に違わぬこの一冊。拙ダイアリーをご覧の皆様も、ぜひご一読を。
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※ 言うまでもなく、パロディです。小川剛生・訳注の『徒然草』(KADOKAWA/角川ソフィア文庫/2015年)をもとにつくりました。