ローカル大会にて

「二局目の途中までは、素晴らしい碁だった。全勝するんじゃないかと思ったんだけどね。……クジ運(対局の組合せ)が悪かったんだね」
(大会審判長を務めた某先生の言葉)
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3月6日、某所のローカル囲碁大会に参加しました。
この大会は級位者限定で、4局(申請級位によっては6局)の成績で級位が認定されます。私が参加するA級戦(1級〜5級)では4局中2勝すると申請した級位に認定されます。さらに1級申請者の場合、全勝で初段認定という栄誉に浴することができます。
2月の初春段級位認定大会で2級に認定されましたので、今回は1級と申請しました。目標の初段に近づくべく、A級精鋭との対局が始まりました。
(今回はすべて1級申請の方と対局しましたので、手合いは「互先、黒番6目半コミ出し」です。)
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【一回戦・M1級:黒番】
Mさんは定年退職後に碁を始めたそうで、「ボケ防止です」とのこと。しかし1級申請するだけあって着手は確かで、布石ではこちらのミスを的確に咎めてきました。
序盤〜中盤で不利を感じましたので、強引に相手の勢力下に打ち込みました。死にかけましたが相手の見落としもあって生還し、最終的には盤面大差となりました。
結果:中押し勝ち
過去の大会では1回戦で負けることが多かったため、本局の勝利でだいぶ気分が盛り上がりました。内容も良かっただけに、「もう一つは勝てる」と思っていました。
【二回戦・A1級:黒番】
年下、特に小学生〜高校生に苦手意識を持っているため、中学生(もしくは高校生)と思しきA氏を目にしたとき、「打ちづらそうだな……」と考えていました。
本局、布石で立ち遅れたうえに相手に大模様を作られそうだったので、強引にキリを入れました。しかしそれが追い回され、蛇のような形となりました。生きればよかったのですが油断と見落としが重なって一眼となってしまい、20数子が殺されました。さらに別の場所でも20子以上が殺され、頑張ったつもりが報われない形での投了となりました。
結果:中押し負け
1勝1敗と五分の星ではありますが、気持ちの落ち着かないまま昼休みを迎えました。ひとつは二局目の負け方の悪さ、もうひとつの理由は……後述します。
【三回戦・M1級:白番】
どうしてもこの対局で認定を決めたかったため、伝家の宝刀「両三々+天元を打ちました。三局目でこの布石に頼らざるを得ないことに不満もありましたが、勝つためには仕方ありません(過去の大会では不敗の布石ですので)。
しかし本局は、M氏の手堅い打ち方が冴えました。碁に隙が無く、逆にこちらのミスを咎められる展開となったのです。さらに対局時間(30分切れ負け)の関係もあって中盤から気持ちが落ち着かなくなり、ヨセもかなり雑になりました。周囲からは「細かい碁だね」と言われましたが、内容は散々でした。
結果:5目半負け
ついに、「両三々+天元」の布石が敗れました。
【四回戦・S1級:白番】
この大会はスイス方式を採用しておらず、対局相手はあらかじめ決まっています。たまたま本部席にある対戦表を目にしたところ本局の相手が中学生ということが事前にわかり、「苦戦は免れない」と思っていました(前述の「もうひとつの理由」はこれです)。ただ相手がだれであれ、力を尽くすしかありません。布石では(前局で敗れたとはいえ信頼を置いている)「両三々+天元」を打ち、徹底して地を稼ぐ作戦としました。
しかし……結論から言えば、このS氏は強かったです。的確な上に着手が早く、「強い」と思わせる碁でした。本局では時間こそ逼迫しませんでしたが、考えの浅いまま打ち進めてしまっため不満の残る碁となりました。
結果:14目半負け
すべての対局を終えてから、審判長を務めた先生(退役棋士某氏)とお話をさせていただきました。先生はA級の対局を頻繁にご覧になっていたので、自分の対局の感想やアドバイスが欲しかったのです(以下、先生からの言葉を箇条書き)。
・「石の動きが単調ですね。一つ方向にしか動けない打ち方をしています」
・「"見合い"という考え方で打てるといい。たとえばワリウチや両アタリは二つの選択肢があって、"どちらを選びますか"と相手に聞く。相手が打ったらもう一つの方に自分の石を打つんだけど、"残り物には福がある"って言うからね。二つぐらいの動かし方がある打ち方をするといいよ」
・「一局目と二局目の途中までは、素晴らしい碁だった。全勝するんじゃないかと思ったんだけどね。二局目を落としてから気持ちが落ちて、三局目と四局目は惰性で打っちゃったね」
・「新しい布石を打ってたね」(「両三々+天元」のこと)
・「クジ運が悪かった。対局した四人のうち、二人が全勝したんだもんね。強い人とあたっちゃった」
「大会ですから、勝つ人もいれば負ける人もいる。負けた人が、強くなるんです」と、先生は開会式で仰いました。実力不足や碁に対する姿勢の甘さを認識させられた身として、ここで挫けることなく、先生の教えを胸に今後も碁を勉強していきます。
大会結果:1勝3敗により、1級認定ならず