「段位認定大会」に参加しました

9月22日、「段位認定大会」日本棋院有楽町囲碁センター)に参加しました。
この大会は4回戦(スイス方式)で、2勝以上すれば申請した段位に認定されます。9月の大会で1級に認定された勢いに乗って、ついに段位戦に挑戦することとなりました。目標の初段認定を勝ち取るべく、有楽町に集う猛者との戦いが始まりました。
なお予めお伝えしますと、今回は文章が長いです。ご了承ください。また今回はすべて初段申請の方と対局しましたので、手合いは「互先、黒番6目半コミ出し」です。
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【一回戦・I初段:白番】
Iさんは明るい方で、受付を済ませるなり「自信ないよ」と冗談気味に話していました。しかし対局前には囲碁の教材と思しき印刷物に目を通していたので、大会への意気込みが伝わってきました。また何処かの御守りを持参する念の入れようで、実力と運を備える強敵になるのではと危惧しました。
握って白番。大会の一回戦は「星+小目」が多いですが、本局では天啓のごとく「両三々」が頭に浮かびました。当然Iさんにカカリを打たれましたが布石がうまく行き、隅に大きな地を得ることができました。
本局は隅に地を得ながらも、中央で後れを取りませんでした。また辺の攻防が進むうちに件のカカリ一団(五子)を取ることができ、打ちやすい碁となりました。最終的に盤面ではそれほど差がつかなかったものの、気楽かつ奔放に打っていたのでプレッシャーに襲われることなく勝ちきることができました。
結果:18目半勝ち
過去に参加した大会では、一回戦で負けることが多かったです。しかし運よく本局を制することができ、目標の初段認定まであと一つとなりました。
ところで本局のIさん、局後の会話で2級ということがわかりました。「とりあえず挑戦しようと思って……」と控えめな言葉でしたが、碁は積極的で手強かったです。
さらに曰く、「友野さん、このまえ市ヶ谷本院にいませんでしたか?」。どうも2月の「段級位認定大会」のことらしく、どちらかというと目立たないはずの私を覚えていらしたのが何とも不思議な気分でした。
そういえば、以前の大会で見た覚えのある顔が会場に。あれ、あの眼鏡をかけた男性はたしか……。
【二回戦・J初段:黒番】
二回戦の対局が発表されるなり、おやと思いました。聞き覚えのある名前、そして件の眼鏡の男性……忘れもしない、9月の大会で対局した方でした。「あれっ!?」と驚く私に、「前にも打ちましたね」と冷静なJさん。勝てば初段認定という一局ですが、対局開始時から面白くてしかたがなかったです。
9月の対局では力量の差を感じての敗北だっただけに、このリターン・マッチは是が非でも勝つ……つもりでしたが、やはりJさんの力が明らかに上でした。着手に隙が無く、逆にこちらのミスを的確に咎めてくるとあって、中盤あたりで結果の見えた碁となりました。
結果:28目半負け
「やっぱり負けたか」というのが正直なところだったため、敗局の傷は浅かったです。さらに局後にJさんと碁会所や勉強法などの話で盛り上がり、午後の対局に向けてよい気分転換ができました。
【三回戦・M初段:黒番】
握って私の黒番が決まると、「今日は白ばかりで……」とMさん。落ち着いた感じのご婦人で、石を置く所作も綺麗な方でした。
初手でなんとなく星に打つと、Mさんは小目。もうひとつ星に打つと、Mさんはさらに小目。地にカラい棋風なのか、ならば……と、あまり打たない三連星に。足早に辺へ展開すると、Mさんは両小目に小ゲイマジマリという堅陣を作りました。さらに右下隅に三々入りし、序盤から着実に地を稼いできました。私はといえば右下隅で三々定石を打ち終えたのでさてこれから……と思ったところ、ほどなく事件が起こりました。

↑三々定石の黒石が、全滅しました。
三々定石の直後にMさんが右辺下側(P12あたり)に打ち込んだため、お互いの石がトブ展開となったのです。しかし右辺からトンだ白石と三々入りの白石に包囲され、三線の三子が取られてしまったのです。さらに定石の黒石が眼なしとなったため、盤面右下四半分がほぼ白地となりました。大会のマナーとして口三味線などは禁止されていますが、さすがにこのときは「これは酷い……」とボヤいてしまいました。投了の二文字も頭に浮かびましたが、早々に諦めるわけにはいきません。まだ右上や中央や左辺の戦いが残っているので、とにかく攻めることにしました(左上隅と左下隅に白の堅陣が控えているため、大きく不利な状況でした)。
大きな地を得てなおMさんは右辺上側に打ち込んできたため、今度は全力で殺しに行きました。果たして右辺上部から上辺に伸びた一団は眼が無くなり、攻め合いでもこちらの勝ちが確実となりました。さらに左辺から捨て身の攻めを敢行したところ中央の白一団を仕留めることができ、最後には左上隅の「小目+小ゲイマジマリ」の堅陣を崩壊させるに至りました。かつて本因坊戦七番勝負で加藤正夫先生が武宮正樹先生の大石を撲殺した一局がありましたが、結果だけならそれに匹敵する碁となりました。
終局となり、整地するときに異変を感じました。手が震えてしまったのです。思うように石を並べられず、「すいません」と謝りながらの整地となりました。対局中はなんでもなかったのですが、いざ結果を受け入れる段階になって言いようのない緊張に襲われたようでした。
結果:69目半勝ち
遂に、遂に初段に認定されました。表向きは冷静に振る舞っていましたが、夢が叶っただけに全身で喜びを表したい気分でした。
【四回戦・Y初段:黒番】
この大会は2勝以上で免状を申請できますが、3勝だと半額(4勝だと無料)で免状を得ることができます。しかし全額だろうと半額だろうと、免状を申請するつもりでいました。
ということで本局、勝敗はどうでもよいという心境でした。「星+小目」で始めましたが気合が入らず、「布石から中盤で不利→強引に打ち込み→包囲されて小さく生きる」という負けパターンにはまりました。やはり大会は気が抜けると勝てないもので、本局はYさんの手が冴えわたる展開となりました。
結果:17目半負け
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【大会を終えて】
ただただ、嬉しいです。高校で碁を覚えてから今日まで、中断や挫折もありましたが、続けてきてよかったです。
これから二段や三段と、さらに上を目指すこともできます。しかし初段(有段者)になった今だからこそ、まずは自分の碁を充実させたいです。単に勝つだけではなく、入門者や級位者の模範となる囲碁ファンになりたいのです。そしてできることなら、何らかの形で囲碁ファンを増やしてゆきたいです。
初段はゴールであると同時に、囲碁ファンとしての新たなるスタートになりそうです。これからも碁を続けてゆくつもりですので、この「幽玄日記」ともども今後ともよろしくお願いいたします。
2勝2敗、規定により初段認定