「日帰りでもいいじゃないか」


幽玄の間」の会員になってから5年10か月が経ちました。中断した時期もあって順調な棋歴ではありませんが、このたびようやく16級に上がりました。
昇級を決めたのは、18級の方との定先対局でした。これが泥仕合と言われかねないほどの荒れた対局で、334手完という長い一局でした。
ともあれ、かつて18級で停滞していた頃を思えば大きな足跡を残したと言えるでしょう。この一歩を大切に、着実に棋力を上げていきたいです。
ところで、レーティングで段や級が上がると「負けて落ちるのが怖い」という心境になる方がいるそうです。私も同じ気持ちになることがありますが、そういうときは二つの言葉を思い出して対局に臨んでいます。
一つは過日紹介した「級落ちても死にませんから^^」(※)で、もう一つは「日帰りでもいいじゃないか」です。

〔略〕世間は木村二世〔義徳、元将棋棋士。父は木村義雄・十四世名人〕の〔順位戦A級への〕昇級を祝い、ちょっとしたスター棋士になっていた。そして成功体験をもとに『弱いのが強いのに勝つ法』なる本を書いた。これが好評で、つづいて『ボクは陽気な負け犬』という本も書いたが、このなかに将棋指しらしい会話がある。
 木村がB級1組で五連勝して、丸田祐三九段と対戦した。ここで木村は勝ち、六連勝となったが、対局後、丸田に誘われて酒を飲んだ。そのとき丸田は「キミはチャンスだね。日帰りでもいいじゃないか。行ってきたまえ」と励ましたそうだ。この、日帰りの意味はいうまでもない。
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河口俊彦『盤上の人生 盤外の勝負』198〜199ページ。〔 〕は筆者注釈)

結果として木村八段(当時)は翌年度のA級順位戦で降級の憂き目に遭いましたが、棋界の高峰たるA級に在籍した実績は今なお輝いています。
ことが将棋界A級と「幽玄」16級とでは比べるべくもないのですが、「日帰りでもいいじゃないか」の精神で今後もレーティング対局を打つことにします。
6月30日付「級落ちても死にませんから^^」