布石の悩み/繰り返し解け

 まず、新しい知識を得ようとして本を読む。しかし、あんまりピンとこなかったとしよう。そこで投げ出してしまってはいけないのである。1回目に読んだ自分は、以前の自分とは微妙に違っている。その違っている自分の意識でもう一度読むのである。すると、こんどは1回目には解らなかった側面が見えるようになってくる。そこでまたもう一度読むのである。
 これを繰り返していくうちに、その本の全体が自己意識となって完成していく。対象を知るとは、自己の知によって知るのである、その知は弁証法的に積み重ねられた自分の意識の中にあるのである。
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(富増章成『空想哲学読本』 166ページ)

宝酒造杯にむけて、『ひと目の布石』と『ひと目のヨセ』に取り組んでいます。
しかし(初見ということもあってか)、なかなか正解にたどり着けません。特に『布石』は正解率が低く、『手筋』『詰碁』と比べるべくもない状況です。
布石に弱い原因として思い当たるのは、「基本が身についていない」という点です。
(なお、ここから初級者の言い訳が始まりますのでご了承ください。)
『〜布石』のなかで、著者(趙治勲・二十五世本因坊)は6つの考え方を挙げています(※1)。しかしこの「考え方」を今まで身につけていなかったせいか、問題を見ても的外れな答えになってしまう場合が多々あります。これが詰碁の場合ですと、問題の結果として考えられるのは「殺す」「生きる(セキ含む)」「コウ」ぐらいなので打つ手もある程度は限られます。しかし布石では「石の強弱」「根拠を得る(奪う)」「厚みを作る(消す)」「大場を占める」「模様を作る(消す)」「実利を得る(奪う)」などの目標があり、問題図を見てもどう打つべきかがわからない場合が多いです。さらに悪いことに、失敗図にある手を実戦で打っている場合もあるため、「これも一局じゃないの?」と腑に落ちない場合もあります。
ということで、布石に関してはかなり苦労しています。しかし引用した言葉のように繰り返し解いて、その本が言わんとすることが身につくようにします。(※2)
※1 「ポイント1 石の強弱は最優先/ポイント2 狙いを秘めた手は大きい/ポイント3 厚みを意識する/ポイント4 大場の順序に気を配る/ポイント5 模様のポイントを逃さない/ポイント6 実利を稼ぐ」(同書、8ページ)
※2 余談ですが、『空想〜』は高校生の頃の愛読書です。当時、とある英単語集を毎日のように解いていたところ、最後には全ての単語を暗記できました。繰り返すって、大事ですよね。