独白

むかし、人生がうまくいかずに悩んでいたころ、ひたすら本に救いを求めていました。メンタルの本を買い、宗教の本を買い、仕事の本を買い……当時は碁も酷かったので、棋書も買いました。
棋書に関して言いますと、店頭で気になった本は次々と手にしていました。最終的に八十余冊買いましたが、殆どは読まぬまま処分してしまいました。
当時を思い出すにつけて、何故あれほど棋書を買っていたのだろうと我ながら不思議になることがあります。しかし、当時は(碁に限らず)何事においても不安にさいなまれ、自信が持てずにいました。だからこそ自分以外の何かに、ひたすらすがろうとしていたのかもしれません。結果的に損なことをしてしまいましたが、あながち不要な買い物ではなかったと思います。

(本に囲まれる……という生き方に、当時は憧憬を抱いていました。俗世間から離れ、本の中に沈潜したかったのです。)
いま、持っている棋書は十冊ほどで、毎日少しずつ読み進めています。必要のない本は買っていません。
相変わらず人生では悩んでいますが、少なくとも囲碁に関しては以前よりも上手に付き合えているように感じます。