「Go-Up!」における囲碁普及の課題と可能性(その2・囲碁普及と「Go-Up!」)

 2.今日の普及活動について(主に日本棋院
囲碁人口が減少していることは、前回述べたとおりである。囲碁界もこの現状を黙って見ているわけではなく、様々な普及活動を行っている。
たとえば日本棋院では過去に「みんなで学ぶ楽しい囲碁入門教室」や「ゆうちょファミリー囲碁教室」を開催し、子供や親世代への普及を図ってきた。また2007年に「囲碁少年少女育英資金」を設立し、子供への囲碁普及活動を支援した。2015年には同資金を統合する形で「がっこう囲碁普及基金」を創設、教育現場での普及活動に力を入れている。下記の報告を見る限り、小規模ながら堅調な活動をしているようである。

「小・中・高等学校については、正課授業が37校〔平成26年度、以下同〕⇒70校〔平成27年度、以下同〕へと1.9倍となり、課外授業も102校⇒136校へと1.3倍となりました。大学囲碁授業は、20大学⇒23大学へと着実に拡大しています。」
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「学校囲碁事業活動報告」(日本棋院平成28年6月)*1。〔 〕内は筆者。

棋院に限らず碁会所、普及指導員、学校囲碁指導員、あるいはプロアマの有志による普及活動が行われている。なかでも特徴的な活動をしているのが「IGO AMIGO」*2である。同プロジェクトは(囲碁参加率の低い年齢層である)「20代から30代の若者への囲碁普及」を理念に掲げ、定期的にワークショップを開催している。またプロ棋士だけではなく社会人スタッフのボランティア協力で運営されており、普及活動のモデルケースとして挙げることができる*3
ちなみに現在の20代から30代は、主に幼稚園〜高校生の頃に『ヒカルの碁』の漫画やアニメに触れた年齢層である。そのため囲碁に接したことのある人は多いはずだが、『レジャー白書2016』における参加率は低い。2015年調査の性・年代別囲碁参加率(1年間に1回以上おこなった回答者の割合)は、20代男性が2.8%、30代男性が1.1%、20代女性と30代女性が0.0%である。
 3.「Go-Up!」の課題と可能性
さて、「Go-Up!」である。囲碁のソフトやサイトは数あれど、対局と萌え画像を組み合わせた「ドレスアップ囲碁」は特筆に値する。また入門者から級位者向けの対局CPU、豊富な盤面、ポイントや称号などもあり、継続して遊ぶための要素が揃っているといえる*4
ところで「Go-Up!」のサイトマスターが指摘するように、「ドレスアップ囲碁」のターゲットは20代〜40代である*5。結果として囲碁参加率の低い年齢層むけの要素が前面に出た形だが、それゆえ他に類を見ない対局サイトになったといえる。否定的な意見もあるだろうが、「ドレスアップ囲碁」における「萌え」が囲碁普及に新たな可能性を示したのは間違いない*6。同サイトが今後どのような発展をするかはわからないが、「ドレスアップ〜」は残すべきといえる。
「Go-Up!」の今後の課題は、いかに同サイトを周知させるかという点にある。これまでにも囲碁関係のツイッター2chでリンクされたようだが、最終的には囲碁を知らない人にも目につく形でサイトが紹介されれば最良である*7
次回は余談を兼ねて、「メディアと囲碁普及」「筆者と囲碁普及」ついて述べる予定*8

*1:「がっこう囲碁普及基金」の寄付者宛てに郵送された(筆者もその一人)。

*2:http://www.igoamigo.com/

*3:本文にあるとおり貴重な活動であるのだが、日本棋院のトップページには小さなバナーしかない。もっと大々的に紹介してもよいのでは……。

*4:本文では褒めっぱなしだが、欠点もある。「白番」「投了」「置碁」が無いのである。

*5:9月1日付「その1」コメント欄。

*6:逆に、対局に勝つと囲碁男子のイラストが見られるモードがあってもいいと思うが……サイトマスターは消極的なようである(6月19日付「ザ・会議室」コメント欄)。

*7:このダイアリーでは何度も宣伝しているが、閲覧者が少ないと思われるので効果は限定的である。

*8:やはりたいしたことは書けませんので、過度な期待はご遠慮ください。