「Go-Up!」における囲碁普及の課題と可能性(その1・囲碁人口の推移と現状)

 はじめに
「初心者向け囲碁対局サイト Go-Up!」が公開されてから、半年が経った。入門者や級位者むけの貴重なサイトであるが、アクセス数やユーザー数は伸びていないという。一介のユーザー&囲碁ファンとしてその原因を考えるうち、同サイトが抱える課題が現在の囲碁普及の課題と重なるという結論に達した。簡単に述べると、男女を問わず20代〜40代の囲碁参加者が非常に少ないこと、その課題を解決する可能性が「Go-Up!」に示唆されているという点である。
そこでまずは『レジャー白書*1や先行研究をもとに、囲碁人口(囲碁を1年間に1回以上おこなった人口。『レジャー白書』による)の推移や現状を確認する。
 1.囲碁人口の推移と現状
囲碁人口の推移については優れた先行研究があるので、まずはそちらを紹介する。
  「日本の囲碁人口」(ウェブサイト「囲碁データベース」内記事)
この記事によると囲碁人口のピークは1982年の1130万人である。2013年が280万人なので、約30年で4分の1ほどに減少していることになる。ちなみに2014年が310万人、2015年が250万人であり(『レジャー白書2016』)、グラフにすると以下のとおりである(囲碁人口に関する詳細な考察は、上記リンク先記事に譲る)。

また(公財)日本棋院や(一財)関西棋院には、アマチュア向けの会員制度がある。有水泰道氏は『精魂の譜』*2の中で日本棋院の会員数について述べているが、これも減少傾向にあるという*3日本棋院では2015年10月から「入門会員」「入門ネクスト会員」「初心者会員」を新設した。これにより会員数がどう変化するか注目したい*4
囲碁人口の減少とともに押さえておきたいのは、参加者層の偏りである。2015年調査の性・年代別の囲碁参加率(1年間に1回以上おこなった回答者の割合)を見ると、70代男性が18.3%と最も高い。逆に20代から50代の参加率は男女を問わず低く、40代では男女ともに0.3%である。10代はある程度参加しているが、その親の世代が殆ど参加していないといえる。

この「偏り」が顕著となった例が、雑誌「碁ワールド」2016年4月号の記事「2016年認定100問データ集」である。同年1月号に「新春企画認定100問」という段級位認定企画が掲載され、4月号で解答発表&応募者データが公表された。Twitterで画像が出回ったのでご存知の方もいると思うが*5、応募者4549人のうち4割強が70代である。この企画が級位者から高段者むけである点(入門者むけではない点)は考慮しなければならないが、20代から30代の応募者が特に少ない点は留意すべきである。
*6
次回は、囲碁普及および「「Go-Up!」の課題と可能性」について述べる予定*7

*1:(公財)日本生産性本部・編。本稿を書く際に参考にしたのは2016年、2010年、2007年、2001年、1996年、1991年、1986年、1985年の各版。

*2:有水泰道・著/誠文堂新光社/2006年

*3:少し古いデータだが引用する。「八〇年代半ば、七万人を超えていたのが、九〇年代末になると、六万人台半ばを割り込むようになっていた。〔中略〕二〇〇四年度末の段階では、会員数が五万人を割り、〔以下略〕」。以上、『精魂〜』235ページ。

*4:しかし日本棋院のウェブサイトや事業報告を探しても、現在の会員数を調べることができない。漸減傾向にあると考えられるが、実情は不明である。

*5:参照ツイート:https://twitter.com/igokyoto/status/710851544820781057

*6:「碁ワールド」2016年4月号181ページ。画像は筆者がスキャンしたもの。

*7:たいしたことは書けませんので、過度な期待はご遠慮ください。